卓球ラケットの選び方

ラケットはバランスが全て(万能のラケットはない)

5枚合板、7枚合板、インナーカーボン、アウターカーボンなど数多くのラケットがありどれを選んだらいいかわからない方が多いかと思いますのでラケット選びの私なりのアドバイスを書きます。

ラケットは、バランスが全てです。

ラケットの要素は、「硬さ」と「しなり」の2つに大きくわかれます。

POINT「硬さ」はボールの威力に大きく関連し
「しなり」はボールのコントロールに大きく関連します。

「威力が出ること」「コントロールがしやすいこと」は、一般的に相反する要素です。

硬すぎるとコントロールが難しくなり、しなりすぎると飛びません。

基本的には硬くなるとしならなくなり、軟らかくなるとしなります。

しかし、一般的に上級者がラケットに求めることは、「硬くてしなる」ことです。

この一見矛盾する要素を高いレベルで両立させているラケットが、良いラケットです。

 

●硬さとしなりのバランスは材質と厚みで決まる。

硬さを決める要素は素材です。硬くするためには硬い木を使うか、カーボンを使います。

しなりは材質の硬さの他、ラケットの厚さと形状が大きく影響します。基本的には薄くなるほどしなりが大きくなります。

メーカーのカタログをよく見たらわかりますが、硬い素材を使うラケットは薄く作りますし、軟らかい素材を使うラケットは少し厚くなります。

あとは硬さの中にフィーリングがありますので、硬い木のフィーリングが好きな人や、カーボンの硬さが好きな人など、好みによって分かれます。

しなりをどこまで必要とするかは、その選手のプレースタイルによって決まることが多いです。

スマッシュを多用する選手にはそこまでしなりは必要ない場合が多いですが、ドライブを打つ選手が、低いボールに対して面を極限まで被せてボールを掴もうと思えばしなりが必要になります。

 

ラケットで足りないものをラバーで補う

ラケットで足りない要素はラバーで補完しましょう。

例えば…

・しなりがどうしても必要だから、よくしなるラケットを選んだが弾みが少ないから、よく弾むラバーを貼る
・威力が欲しいから威力の出る硬いラケットを選んだがコントロールがなかなか難しいから、軟らかめのコントロールがしやすいラバーを貼る

などのような選び方が一般的です。

ラバーありきでラケットを選ぶことも当然ありますが、まずはラケットを決め、足りないものをラバーで補うという考え方で選ぶと良いとアドバイスします。

組合せは無限にありますので、全て試すことはできません。まずはラケットから決めていくと良いでしょう。

ざっくりとした方向性を言えば

・ドライブを多用する方はカーボン入りの、飛びとコントロールのバランスが取れたラケット
・スマッシュを多用する方には、弾んだ方が打ちやすい選手と弾まない方が打ちやすい選手がいます。

弾んだ方が打ちやすい方は硬く厚くしなりの少ないラケット、弾まない方が打ちやすい方は、檜などの軟らかい材質のラケットか、しなりの強いラケットを選ぶと良いと思います。

 

「高いラケットは使いにくい」は間違い

初心者はコントロールを重視し、弾みは抑えたラケットを使うことが一般的ですが

初心者に気を付けて欲しいことは「ラケットは性能が高いほど、コントロールもしやすい」ということです。

「高いラケットは扱いにくく上級者が使うもの」と思う方が多くいますが、そんなことはありません。高いラケット程基本的には扱いやすくなります。ハイエンドクラスのラケットが全て弾みばかりを追求しているわけではありません。

むしろ「下手だからこそ、ラケットの力を借りる」という考え方の方が良いと思います。

どんな習い事にも言えますが、「初めから良いものを持った方が上達が早い」のは卓球も同じだと思います。

 

大人は飛ぶラケットから始めてもOK

また、私が勧めるラケットは大人と子どもで違います。

よく「初心者は自分の力で打つ事を覚えるために、飛ばないラケットが良い」ということが言われます。
私は、ジュニア選手はこれに該当するが大人は必ずしもそうとは言えないと思います。

子供は力がなく、大人は力があります。

大人は既に筋力があるため、初心者は肩に力が入ってガチガチしたところからスタートします。

子どもは逆にフニャフニャしていて、力むことができません。

子どもは力を入れれるようになることが最初の課題ですが

大人は力を抜くことが最初の課題になります。

以上のことから、大人は弾むラケットからスタートする方が良い場合が多いです。ラケットが弾まなければ、いくらでも力を入れてしまうからです。弾むラケットは力を入れなくても十分飛びますので、力を抜くことを覚えやすいです。また、力むとオーバーばかりしてしまうので力を抜かなければ入りません。

子どもは力がないので、練習を重ね全身を使って打つことを目指します。だからある程度スイングスピードがつくまでは弾まないラケットが良いと思っています。

ただ、大人の中でも子供のように力むことが苦手な人には弾まないラケットを薦めます。

 

●大きな金額差を感じないなら良い方を選ぼう

プロが使っているようなラケットは、初心者が使っても問題ありません。

何十万もするなら考えものですが、ほとんどの最高級ラケットは1~2万円台です。

逆に、安いエントリーモデルでも競技用なら5000円から8000円くらいはします。

金額的には数千円~1万円くらいの差なので、最初から良いものを使うことも視野に入れてラケットを選んでみて下さい。

 

全ては本人の感覚

最期に、用具はどこまでいっても感覚的なものです。

飛ぶ方がコントロールしやすい人もいれば、飛ばない方がコントロールがしやすい人もいます。

硬い木を軟らかく感じる人、軟らかい木を硬く感じる人も多くいます。

軟らかいラケットを飛ぶように感じる人もいます。

感じ方は人それぞれなので、自分の感覚を大切にしてください。

 

2種類の「しなり」

 

余談ですが、「しなり」には2種類あると思います。

私はこれを「縦のしなり」と「横のしなり」と呼んでいます。

木材には「弾性」が強い材と「塑性」が強い材があります。

弾性とは曲げても戻ってくる性質で、塑性は元に戻らずに変形する性質で曲げると割れてしまいます。

広葉樹は弾性が強く、針葉樹は弾性が弱く塑性が強い材です。檜などが針葉樹の代表的な材ですが、単板などは曲げると真っ二つに割れてしまいます。

檜などの針葉樹は「軟材」に分類され、塑性が強く、あまり「しなり」が少ない材と言えます。

しかし、檜は広葉樹に比べて軟らかいため、面に対して垂直の圧力に対しへこんで戻ってくる「縦のしなり」があります。

面に対して垂直の圧力とは、スマッシュのように面を立てた状態でラケットにかかる力です。

広葉樹は硬いため、メトロノームのような動きである「横のしなり」があります。

要するに、ドライブ系の技術には「横のしなり」が強い材が適していて、スマッシュ系の技術には「縦のしなり」が強い材が適しています。

5枚合板でも、2枚目と4枚目が針葉樹になっているラケットは多くあります。また7枚合板で全て針葉樹などのラケットもあります。

自身のプレースタイルに照らし合わせて材を考え、「もう少しドライブが打ちやすいラケットにしよう」「もうすこしスマッシュが打ちやすいラケットにしよう」など考えてみて下さい。